健康ア・ラ・カルト
「運動とインスリン抵抗性 パート2」~さとやま整形外科内科院長が贈るコラム~
健康ア・ラ・カルト#9
さとやま整形外科内科院長が贈る本コラムでは健康に関する雑話や豆知識などをいろいろご紹介していきます。
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「運動とインスリン抵抗性 パート2」
今回は聞き慣れない「インスリン抵抗性」について、シリーズの第2回です。
※パート1はこちら
前回は、インスリン抵抗性が2型糖尿病の原因であるばかりでなく、高血圧、高脂血症、心血管系疾患など生活習慣病のすべてに深く関わっていることを述べました。
今回はその理由について解説しましょう。
それは
①インスリンが血糖を下げるだけではなく、さまざまな働きをもった多能性ホルモンであること
②主な作用の血糖降下がうまくいかず、高血糖となるためにインスリン分泌が刺激されて、代償性の高インスリン血症となること
③インスリン作用のすべてが抵抗性ではなく、抵抗性を免れる作用が存在すること。
これらの結果として、インスリンの作用が不足と過剰の混在した状態がもたらされることになるのです。
インスリン作用の不足は糖尿病だけではなく、血管内皮のNO(一酸化窒素)産生を低下させて、血管拡張を障害し高血圧を導き、同時にバリアー機能を傷害して炎症性細胞の血管壁内侵入を許し、これがコレステロールを貪食してアテローム硬化を生じるのです。
一方、インスリン作用の過剰は、脂肪合成が刺激されて肥満や脂肪肝が生じ、トリグリセリド(中性脂肪)の増加、さらに血管平滑筋細胞の増殖が起きて動脈硬化が促進し、また腎のナトリウム貯留で高血圧や心不全などに繋がるのです。
このようにインスリン抵抗性はインスリン作用の必須部分が欠落し、抵抗性を免れた部分はインスリンの過剰が裏目に出て、いろいろな生活習慣病の病態を惹き起こすことになるのです。
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さとやま整形外科内科 院長 稙田太郎
インスリン抵抗性に関し、日本でいち早く人工膵臓を駆使して臨床研究を展開。 医学博士号取得、元日本糖尿病学会専門医、指導医、功労評議員。
沼津市東原(愛鷹)の「さとやま整形外科内科」 内科・リハビリテーション科・整形外科
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