健康ア・ラ・カルト
「『運動と遺伝子』シリーズ パート1: エピジェネティック変異」~さとやま整形外科内科院長が贈るコラム~
健康ア・ラ・カルト#11
さとやま整形外科内科院長が贈る本コラムでは健康に関する雑話や豆知識などをいろいろご紹介していきます。
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「『運動と遺伝子』シリーズ パート1: エピジェネティック変異」
このシリーズでは老化や寿命に関係の深い遺伝子に運動が如何なる効果を与えるかについてみることにしましょう。
細胞は体の内外の環境からさまざまな情報を受け入れ、遺伝子DNAの基本的な塩基配列(これをゲノムと呼びます)は変えずに、獲得した形質を一世代のみならず後世に伝えることができるのです。
すなわち同じ塩基配列のDNAでも異なった形質が生まれるのです。
これを"エピジェネティック変異"と呼びます。
その好例が、アメリカでクローン猫がつくられたとき、ゲノムを提供した猫と毛色や模様が違ったことは有名な話です。
その正体はDNAに直接あるいはDNAを包むクロマチン蛋白にさまざまな化学的修飾(メチル化、アセチル化、リン酸化など)が起きることで、遺伝子の働きが変わるのです。
このように遺伝子は一生を通じて不変ではなく、エピジェネティック変異は加齢と共に増加して行くことが知られています。
遺伝子変化の引き金になる生活因子としては、食事、肥満、喫煙、アルコール、生活スタイルなどがありますが、その中で運動が最大の有益な刺激であることが分かってきました。
例えば
①わずか45分間の運動で骨格筋DNAのメチル化率が減少。
②定期的な運動で、骨格筋の重要な遺伝子PGC-1αのプロモーター領域のメチル化が減少し、その結果、ミトコンドリアが増加。
③ヒストン蛋白のアセチル化が高まり、グルコースの運び屋GLUT4が増加し、その結果、血糖が下がりました。
このように運動は遺伝子まで届き、遺伝子を有益な改変に向ける大きな力があるのです。
インスリン抵抗性に関し、日本でいち早く人工膵臓を駆使して臨床研究を展開。 医学博士号取得、元日本糖尿病学会専門医、指導医、功労評議員。
沼津市東原(愛鷹)の「さとやま整形外科内科」 内科・リハビリテーション科・整形外科
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